1970年代に発売されたJBLのシングルコーンスピーカーユニット。
価格もさながら、作りの良さと独特な音でオーディオファイルを魅了した。
模造品ならぬ似た物製品は、国内の多くのスピーカーユニットメーカーが発売。
シングルコーンは単発なので、個性乱発の音になる。これは変えることが出来ない。
それぞれにはそれぞれの良さがあり、また耐えられない悪さもある。
自作派には、やりがい挑戦のし甲斐があるのがシングルコーンスピーカーユニットだ。
スピーカーシステムの原点はシングルコーンスピーカーシステムであり、これは揺るがない。人間の聴覚に一番近いと言えるだろう。マイクもそうで、完璧なコンデンサーマイクロフォンじゃなく良質なダイナミックマイクロホンが人には優しい。
考えてみれば、6畳や10畳はたまた15畳程度で鳴らすのに、B&W801D4はいらない(いるけど)。はたまた、モノラルアンプ2台なんて要らない。
3Wやそこらしか出さないのに無駄としか言いようがない(無駄でも欲しいが)。
多くのメーカーではJBL LE8Tに驚いただろう。 我々ならもっと安く良いものが出来ると思ったのではなかろうか。JBLは買えないけどと言う、群集心理に乗ろうと思ったのかも知れない。しかして、どうだろう。 そうは行かなかったように思える。
どうしても3万円やら4万円の製品にはならなかった。安く上がった分売れたろうが、音はJBLを超えられなかったと思う。
しかしてLE8Tは不世出の名器となった。
腐っても鯛と言うけど、オーディオ界は駄目です。 古いものはオリジナルとはかけ離れ別物となります。くれぐれもご用心下さい。
JBL LE8T 凡そ37000円~42000円 1974年~1980年頃
JBL LE8T-H 38000円~49000円 1981年~1984年頃
35~15000Hz 3.9kg
音よりも価格の高さに驚く。この価格なら当時の2ウエイはもとより3ウエイスピーカーシステムも購入できたからだ。
ラジエーターは極薄アルミ。
サンスイ SANSUI SP-LE8TmkII 79800円 1981年頃
LE8Tを自社箱に入れたスピーカーシステム。グリルの格子は指向性の拡散にも効いたとか。実情は定かではない。
価格は8万円弱、当時の貨幣価値からすれば25万円位になる。ペアで50万円相当。
箱入りでの測定値。50~8000Hzまでほぼフラット。高域はだら下がり。
サンスイの自信作ではなかったかと思う。邪道だが今どきのスーパーツイターが欲しい。
National EAS-20F10/EAS-20F12 20センチ 8000円 1987年 フェライトマグネット
National EAS-16F10/EAS-16F12 16センチ 5000円 1987年 フェライトマグネット
ナショナルがこのようなスピーカーユニットを発売したのは知らなかった。
フォスターより作りが良く安い。 音は聴いていないが、失敗だったかもと思った。
ラジエーターはアルミだと思う。
ナショナルの周波数特性
FOSTEX FF225N 20センチ 9300円 1992年 フェライトマグネット
FOSTEX FF165N 16センチ 6000円 1992年 フェライトマグネット
16センチは発売されて直ぐに購入。当時は入れる箱がなかったので苦労した。
購入したのは、フォスターのユニットを複数使用しており音が良かったからだ。
しかし、ダブルコーンなどとは似ても似つかぬ音で驚いた。20センチならば既存の箱が使えたが、何しろ9300円は高すぎた。 ラジエーターは恐らくアルミ。簡単に凹んだ。
16センチの周波数特性
特性に見るように高域がややきつく出る。これは癖のようなもので、辟易した。
CORAL 8F-60 20センチ 10500円~12000円 1970年代~1976年頃
CORAL 6F-60 16センチ 9500円 1980年頃
ラジエーターはジュラルミン。これが音を決める。
コーラルの製品はすべからく作りが丁寧で良い。 だだ、他社製品に比してやや高かった。
Pioneer PE-201 20センチ 14000円 1978年
ラジエーターはジュラルミン。ダイキャスト製フレーム。
特性はほぼフラットだが、10000Hz以降は暴れている。ジュラルミンの所以だろう。
コーンは浅型だが60度の落ちはエッジで跳ねているようだ。
Pioneer PE-101 10センチ 5500円 1978年
何故か16センチが発売されていない。価格の点か音質か開発断念には理由があるはずだ。
フルレンジと言うよりは、ツイターに近い特性を持つ。
長岡鉄男氏のスワンに採用するのも良いだろう。10センチは色々楽しめる。
YAMAHA JA-2070 20センチ 65000円 1980年頃 5kg
20~20000Hz アルニコマグネット使用
非常に高価なスピーカーユニット。JBL LE8Tよりも倍近く高い。 輸入等考えるとLE8Tは実質2万円位ではないのか?この製品はガチで65000円である。これは売れないだろうと思った。どうしてこの価格になったのか、疑問が渦を巻く。
ただ、性能質感共に全てのシングルコーンスピーカーを凌ぐのは間違いがない。
ペアで13万円もするのだ。買えるなら買いたいぐらいだ。このユニットを納める箱は、個人ユーザーでは無理だと思う。相当な剛性が必要だ。箱に10万円以上掛けるのは素人では不可能だろう。
ラジエーターはベリリウムで、軸上では40000Hz位まで再生できているようだ。
実用域は10000Hzから15000Hz位だろう。それでも優秀である。
エッジはウレタンなので、経年で劣化し穴が開くのは変わらない。
スピーカーユニットの耐用年数は概ね5~6年と考えて良いだろう。兎に角エッジがやられる。そう言う意味ではスピーカーユニットよりアンプは長く使えると言えるだろう。
※画像はオーディオの足跡様より引用しました。