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ピアノを始めたころ、あれもこれも弾きたくて・・・。
いつも楽譜ばかり探していたころ・・・。
そんな日々がありました。
でも、ピアノはとても難しくて、挫折するばかり。
やっぱりピアノは無理なんだと、とてもじゃないが私には無理・・・。
そんな日々が続き、楽譜はしまい込んでしまいました。
これなら弾けそう・・・、そんな曲ばかり探して。
月日はどんどん過ぎていきました。
どうしたの?
そんな声が聞こえました。
もう弾かないの?
その声はピアノからでした。
私は待っているの、たくさん曲が聞きたいの・・・。
でも、とてもじゃないけど・・・、弾けないよ。
みっともなくて弾く事もできないよ。
そんなことない、私が応援するから・・・。
たくさん、たくさん曲を聞かせて。
私、いつも待っているのよ・・・。
私はあなたの心なの。
そうだった。
あのたくさんの曲に感動した日々。
それはまぎれもない事実だった。
ただ弾けないばかりに、その感動すら捨ててしまっていた。
下手でもいい・・・。
ピアノを弾こう。
出来なくてもいい・・・。
ピアノを弾こう。
誰のためでもない。
待っているピアノのために・・・。
ありがとう・・・。
えっ?
今の声は・・・?