大きく重い頑丈なニッコール、を代表するようなレンズがかつては存在していました。
35-70mmF3.5は二本所有。何れも中古品ですが、このレンズは破格値のものを購入したのとジャンク品を購入。
もちろん程度の良いものもあることはあるが、さすがに2万円などは出せないのです。
多くは経年劣化による曇りやゴミ、キズが低価格品の要因です。
ここでの画像は以前レポートした最初のレンズ。いわゆる曇り玉です。
後で買ったレンズはそれほど曇ってはおらず、まあまあ使えるかなと言うレベルの品。しかし、比べて見ると
こちらの曇り玉の方が断然シャープに感ずるのです。分解して拭いて見ましたがそれほどは改善しませんでした。
というよりか、肝心な部分はさすがに分解せずでした。
以下はテストですが、意図的にサイズを小さくしております。無補正です。露出もいじっておりません。
拡大して24インチのモニターで見ると、さすがに曇り玉の本性が現れます。レベル補正や暗部補正をすると見違えるように
なりますが、サイズが小さいとあまり変化を感じません。それで比較画像はやめました。
テストカメラはD90です。
24インチで見ると、いわゆるしらっちゃけた画像になります。ここでは分かりませんが、画像は極めてシャープです。
歪曲もかなり抑えられており、さすがに昔の高級レンズ。コントラストを少し調整すると素晴らしい画質に変貌します。
本来の画質はそうなのでしょうが、残念ながら当時の新品があるわけではありません。28-45mmF4.5は1977年6月発売。
35-70mmF3.5は1977年11月発売。ともにニッコールAi化と同時に発売されたレンズです。
その後25-50mmF4が1979年11月に発売されています。何れも96,000円から110,000円と高価なレンズでありました。
ボケが非常に浅い。たまたま露出が適正であったので、しらっちゃけた画像にはなっていません。きりきりとした感じの画像とは無縁の画像ではないでしょうか。ぼけが非常に柔らかく、なんだかな~であります。
暗部は黒ではなく、いわゆる白い裏ごし。シルキーですねえ。まあ、暗部が真っ黒に潰れるのよりはいいかなという感じです。
この写真もボケが非常に浅く、柔らかい。絞りの形状が7角形に出ています。背後には格子があるが二線ボケにはかろうじてなっていないようです。
このぱすてるカラーの色合いがじつに素晴らしい。見た目はもう少しハッキリしているのだけれども、独特の世界を作り上げてしまっているようです。残念ながら手持ちのEDレンズではこうは写りません。
これはまんま、しらっちゃけた画像ですね。じつは日陰なのでかなりな露出オーバーなのです。二段ほど落として適正でしょうか。ここではそのまま掲載します。これはつつじの花の解像もそうなのだけれど、ぼけが非常に良いのに感心します。ズームレンズなんですよねえ。ただ、ぼけの実態自体はかなり硬質なもので、光のこまかな反射はさざなみ状にささくれています。また周辺はやや流れてもいます。これはF11とかでは見られませんから、開放に近い絞り付近の特性なのでしょうね。
つまり中心部から外に掛けてさざなみ状に焦点がずれています。光点はすべてリングになっています。
これは24インチで100%以上に拡大しないとわかりません。
上の画像の部分400%拡大画像。光芒のさざなみ状のリングボケ。
周辺に散らばって落ちている枯葉は比較的鮮明で、色収差はほとんど認められない。二線ボケのようでもあり、輝度が高い所ほど顕著で激しくうるさい。シャープなレンズは焦点を外れると二線ボケになる傾向があるが、それなのかも知れない。
何れにせよ通常では分かり難く、このレンズの設計の苦労が見て取れる場面です。絞りと焦点域により画質が変化するのは当然であり、開放、中間、望遠端とシャープさを要求されるのだから設計者の苦労は大変だと思います。
しかして、ニッコールAi35-70mmF3.5は優秀なレンズであると相成ったわけです。
現在ならともかく、1977年つまり33年も前の発売のレンズなのですからね。レンズの設計はコンピュータでやった訳ではありません。算盤ですよ。凄いと思います、ほんと。
次に参考までにレンズ構成を載せておきます。データは正確ではありません、あくまでも参考としてください。
また拡大率も同じではありません。(参考ニコンレンズデータ等)
なるほどのう。わかったわい。
それではわしも少し薀蓄を垂れよう。ウンチではないぞよあはははは。
35-70mmF3.5 9群10枚 最短撮影距離 1m 重量540g |
前群が4枚で後群が6枚。 レンズの前玉から後ろまでは90.2mmで後期型よりは短い。 鏡筒の長さは101mmであり後期型より僅かに長い。 |
35-70mmF3.5S 9群10枚 最短撮影距離 70mmで35cm 重量520g |
前群が4枚で後群が6枚。ただ2枚目が違う。 前玉の曲率が初期型と違う。最短撮影距離の短さの所以であろう。 レンズの前玉から後ろまでは97.15mmであるが、鏡筒の長さは96.5mmで初期型よりはやや短い。 レンズの曲率が高く、このために価格がやや高くなってしまったようだ |
25-50mmF4 10群11枚 最短撮影距離 60cm 重量上記と同等 |
前群が4枚で後群が7枚。広角であり前玉の曲率が高い。 図で見る通りに全長が35-70mmよりやや長い。 後ろ玉最後尾の一枚の追加が、このレンズの決めであろう。 レンズの曲率を見るとこのレンズの造りの困難さが良く解ると思う。よって、価格は11万円と最も高い。 |
こういうレンズの構成図を見ていると、色んなことが見えてくる。曇りの発生する場所とか、埃の混入する場所とか、
カビの出やすい場所も解るような気がする。中には空気があって、冷えたり温まったりする。またレンズには接合面のあるものもあり、経年劣化の元凶になるだろう点も見えてくる。空気を封じ込めれば、それが空気レンズの役目もする。空間もレンズの設計の重要な点であり、空気レンズを使うことによってガラスは何枚か減るだろう。レンズは前部まとめて一枚と考えても良く、前群を一枚と考えても良いだろう。
基本的には何枚もレンズを使って、一枚のレンズを作り上げているだけなのだから。
ちなみにこのレンズの延長線上にあるレンズはAF24-70mmF2.8であろう。こちらは11群15枚構成でEDレンズを3枚、非球面レンズを3枚と豪華版である。価格は273,000円。高いのう。じつは、いまでこそEDレンズは氾濫しておるが、EDレンズが使われ出したbのは1975年頃でありしかも単焦点の望遠レンズやズームでも高価なものにしか採用されてはいないのじゃ。28-70mmF2.8に採用されたのが1999年、なんとそれまではEDレンズと銘するショートズームはなかったのじゃのう。EDレンズは望遠での収差補正を主に採用されておったのじゃが、何しろ相当にレンズが高かったらしいのじゃ。現在多用されているEDレンズはどうやら製法が違うらしい。それでコストダウンが可能になったらしいのじゃ。
ニコンのEDという言葉には皆震え上がったものなのじゃわい。ただですら写りの良いニコンレンズだからのう。
だからニコンはポリシーを持ってEDレンズを投入しておった訳さ。
だから、EDレンズと非EDレンズは本当は写りに相当な違いがあるのが本当なのじゃ。ただ単にレンズの枚数を減らすために使ったのでは、全く意味がないのじゃのう。それで消えていったレンズもあるようじゃな。
収差を抑えるためにだけ使うのが正しいのじゃのう。収差を極限まで抑えて、はだめならしくて少しは残さないと絵が硬くなってしまうらしいのう。
難しいのじゃ。あはははは。