デッキの周波数特性を見る その1
基準となる音だけでは、全体が見えてこない。そこで、スイープ信号による周波数特性の違いを調べてみた。
周波数特性は、チェックCDのスイープ信号を使用。周波数特性をソフトで測定してから気付いた事がある。
周波数特性を測定するにはデッキのREC OUTに接続するが、これは各デッキの録音アンプを通ると言うことになるまた、再生時にはLINE INで再生アンプを通る。CDプレーヤーも何らかの回路を通ることは同じだ。
CDから各デッキまでは、セレクターも含めると実質的な長さは7mになる。この影響はどうかと考え、
1.5mでもテストしたが差は出なかった。また、セレクターや分配器の介在の影響も調べたが、ノイズの増加以外周波数特性には変化がなかった。CDは二台あるが、周波数特性の出力に違いが出なかったので、再テストは全て手元のCDプレーヤで出力した。
特性の計測は、正確を記すため1台当たり相当数の計測を行った。このテストは数日間かかり、撮影した写真は数百枚に及んだ。スマホでパソコン画面を撮影し、シルキーピックスで歪みを補正と言う作業がこれに加わりたいそう難儀な作業であった。
下は、パソコンドライバー周波数特性。20-2000Hz
ダウンロードしたスイープ信号。この信号はフラットなので使いたいが、今回はCDの音源を使用。
パソコンドライバーのせいか、僅かな変動がある。
まずまず平坦としておこう。
CDプレヤー出力特性。20-2000Hz
デノンのCDプレーヤーは周波数特性記載にに+-がない。通常は+-0.5db~±1dbがメーカー発表の周波数特性なので、
実効周波数特性はもっと悪くなる。実測定値は-3.5db。±1.75dbとなる。
このCDの信号をデッキに通す。
20から20000にかけて僅かに下降している。
つまり、全ての特性は右肩下がりの特性となる。
デッキのアンプの周波数特性お知るために、個別に入力し特性を見る。CDの特性に、
各デッキの特性を重ねてある。
100Hzから2000Hzまでの中間線を重ねているので、高域・低域に差があればわかる。
グラフの表示がまちまちなのはPC画面を撮影したためと再生レベルの違いのため。
概ね差はなく、1973年から2011年まで製造の各デッキの録音アンプは優秀であると言えよう。
ソニー555ESL ほとんど差はない。
ナカミチ581 ほとんど差はない。CD曲線に近い。
ソニーTCK5 最低域が僅かに上昇。
テクニクスRS-676U 最低域・最高域が僅かに下降している。
ティアックAD-800 現代のデッキ。特性はほとんど差はない
ティアックA2300SR わかりづらいが、40-50Hzが僅かに増加している。
なおデーターは、0db ・-10db ・-20db ・-30dbで行ったが、一部-5dbや-40dbの計測もある。
困ったことに、VUメーターの値とパソコン上のソフトウエアでは表示レベルが10db異なり、
また各デッキも0VUの出力値が異なる。
また、テープの走行性は極めて悪く、左右のレベルが一致しないのがほとんどであった。ただ、
計測は常にピークレベルなので左右どちらかを基準にすれば問題はない。CDより0dbの信号を送り、
各デッキのVUメーターに合わせた場合のソフトウエアの表示はソニー -14db、
ナカミチ3.7db、TC-K5 -8.5db、テクニクス -9.7db、
ティアックAD-800 -5dbであり、それぞれのデッキには左右の出力差が1.5db程度ある。
再生においてはこの差は更に広がる。再生時のVUメーター表示はソニー 0db・-6db、
TCK5 -2db・-3db、ナカミチ 0db・-1db、
テクニクス -4db・-7db、ティアックAD-800 -5.8db・-5dbであった。
この様に固定出力はメーカーによりバラバラである。
ちなみに各デッキの特性は以下の通りである。
下の図は、-20dbの値を6台分重ねた物である。最も白く見える線がティアックのAD-800である。
ストレートに20000Hzに達しているのは、オープンリールテープデッキのA-2300SR。
ついで、ソニーカセットデッキTC-K555ESL。
現代のカセットデッキAD-800は最後尾に甘んじた。テクニクスRS-676Uは周波数特性は狭いが、高域のレベル上昇が音質に良い影響を与えているようだ外部信号発生器や各種測定機材があれば、より正確な情報を得られるが修理業者でもないのに
現実的ではない。この測定は信号を録音したCDとパソコン、ソフトウエアがあれば誰でも簡単に計測が出来る。
日常使用にはこれで充分と思う。
ただ、アジマスを調整することはテープとヘッドの位置関係(記録位置関係)が分かっていないと
収拾が付かなくなってしまう。
[アジマスの調整手順(参考)]
アジマスの調整は再生ヘッドから行う。外部の信号5000Hz以上の信号を記録したテープを作成する
。この作成には測定用デッキを使用してはならない。テープ走行の安定したレベル変動のない、
信頼できる別のデッキを使用する。
再生の前にヘッド回りの点検、目視でテープとヘッドが直角の位置関係であることを確認する。
これは独立した録音ヘッドも同様。コンビネーション構成のヘッドは一回の調整で済む。
ほぼ平行ならそのまま再生に進むが、目視でわかるほど傾いていたら、
ちぎった紙(前が真っ直ぐ)などヘッドに触っても大丈夫な素材でアジマスの調整つまみを回して平行をとる。
録音ヘッドには2本、再生ヘッドには4本のトラックが見えるから、それが一致するように仮合わせをする
。なお、ネジには当初の設定値がネジ止め剤で色付けマークされていることも多いので覚えておく。
カセットデッキでは解りにくいと思う。
ヘッド回りを清掃し、ヘッドも清掃・消磁をしてから再生作業にはいる。
パソコンに起動したソフトで再生レベルを確認。VUメーターは0VU、
ただしパソコンソフトの表示は同じではない。
両方の再生レベルを記録(メモ)する。アジマスの調整ネジを回し、
メーターが最も高く振れる位置に調整する。
アジマスが最適になると、左右のレベルは同じになるか差は最小になる。
ヘッドが片べりしている場合や、送り出しのテープに左右差がある場合は同様に左右は揃わないの
で差を理解しておく必要がある。録音時に左右0dbでも、左右0dbで記録されることはないからだ。
400Hzや1000Hzの信号では、再生レベルを調整するがこれはアンプの問題なので割愛する。
しかし、大幅にヘッドの位置がずれていると
これさえ正常に表示されないので、心配の場合はアジマスの調整前に再生レベルが最大になることを確認し、
リサージュ波形が正確に45度を指すように調整をする。
当テストではアジマスの調整に、デッキ内発信源の8000Hzと15000Hz双方を使用した。
いづれの再生時にもピークが最大になるようにアジマスの調整をする。
15000Hzの高域では簡単に位相が逆転する。テープの走行の安定性が全て出る帯域なので
常に変動し揺れている状態にあるので調整は大変である。一定の妥協点を見つけたら良しとする。
15000Hzで位相が良好でも8000Hzで逆相、この逆も普通にあり得るのでカットアンドトライで作業をする。
次に録音ヘッドの調整をする。同じテープの余白に同様の信号を記録するが、
独立型ヘッド場合は録音ヘッドのアジマスの調整ネジを回しレベルが最大になるようにする。
録音バイアスやイコライザのつまみを録音中に回しレベルが最大になるように調整をする。
オートキャリブレーション機の場合は最初のキャリブレーション以外必要はない。
2ヘッド機はキャリブレーションが固定なので微調整はあきらめよう。
そのテープを再生し、パソコン画面を見ながら少しずつ録音ヘッドのアジマスネジを回し、
そのたびに録音再生を繰り返して、高域のレベルの落ちが最小限の位置で終了する。
このテープを再生し再生アジマスの調整ネジを回しレベルが最大になるように微調整をする。
この状態だ最初に再生した基準テープのレベルと比較をする。
当該デッキは録音ヘッドのアジマスネジが脱落しており、録音ヘッドが大きく傾いていたので、
ネジを元に戻し角度や高さの調整など無駄に時間をかけてしまった。
2ヘッドや同じハウジングにマウントされているコンビネーションヘッドは、
録音ヘッドのアジマスの調整が不要なので助かる。
CD直接の音より、録音された音が良いと良く言われる。
これは、CDに比べ周波数特性が微妙に違うからである。これは各デッキの測定結果でも明らか。
1dbのピークは差が分からないが、数百Hzや数KHzに渡る場合はその差がわかる。
これはスパイスのようなもので、
何十万も出してCDプレーヤーを買い替えるよりは賢い選択になる筈である。
テープにより微妙に変化するから便利である。
ただCDに比べて圧倒的に走行の安定性やノイズは劣るので、理解が必要だ。