DP2Merrillがあまりにも高画質なので、D800Eより良いのではないかと思うようになって来た。
これは嬉しいような悲しいような、忌々しき問題である。なにせ購入価格がまるで違うからだ。
はたしてD800Eはシグマのカメラ、この恐ろしいほどコンパクトなカメラに負けてしまっているのであろうか?
比較のために、撮影行と相成った。D800Eは35mmF1.4Gである。シグマは45mm相当なので、単純比較ではシグマに軍配が上がるはずである。撮像素子のサイズも、レンズの焦点距離も異なるので、同時に撮影しての比較は意味がないので今回はD800Eのみを持参した。
D800Eのハンデはレンズが汎用であるということに尽きる。
天気は曇天で都心はフェイス゛が発生しており、条件は良くなかったが、これが東京の日常なので止むを得ない。
撮影枚数は200枚ほど。絞りはF7.1からF11まで。F5位が最高解像度なのだろうけど、風景は画面の端までチェックの対象となるので敢えて絞った。だいたいF9からF11の範囲である。倍率色収差は少ないレンズであるが、多少発生している。
御茶ノ水から秋葉原方面の遠景の撮影では、曇天とフェイズにより芳しくは無かった。新宿に移動した頃にはやや天気も回復してコントラストも多少上がった。しかし、都心であることには変わりが無い。
帰宅後DP2Merrillを持ち出し近景を50枚ほど撮影。D800の撮影はすべてRAWで、仔細にチェックを行った。
下はD800Eの画像。35mmF1.4G
下はDP2メリル。
その結果・・・。
解像度はDP2がやや良いと言う結論に達した。同一画面を比較した場合。像面の部分においては35mmF14Gが解像しており、均一画面においてはDP2Merrillが解像しているという結果であった。DP2Merrillの素晴らしい解像感はこの均一性によるものと言って良い。35mmF1.4Gはレンズの特性がそのまま像面に反映されており、一見するとシャープではないように見られる。これは、カメラの設計とレンズの設計による差であると認識した。
それと気が付いたのはコントラストである。DP2Merrillはコントラストが強い。レンズの透過性によるものなのかそういう味付けなのかは解らない。D800もD600も全てのレンズに於いて、コントラスとはシグマのDP2Merrillよりは弱めに感じる。これも味付けなのかも知れない。
人間の目は本能的に低コントラスである。暗闇に潜む敵を見逃さないように、目には暗黒が存在しないのだ。感度を上げるのである。そういう意味ではニコンの画像は残念なのかもしれないし、見た目どうりなのかも知れない。
人間の目に最も近いのは35mmF1.4Gのような非均一性の画像であると思う。DP2Merrillの画像がその人間の視覚を超えているがためにより解像していると感じられるのだ。つまりD800Eの画像にはやや立体感があり、DPMerrillの画像にはそれがないように感じる。つまり平板なのだ。これに気が付いた。
DP2Merrillは素晴らしい解像力を持つ。これは唯一無二のものだと断言できる。しかし、残念ながら人間の視覚に最も近いものでは無かったのだ。カメラとしての理想ではあるが、本質ではなかった。これから先、どんなに頑張ってもニコンはシグマのDP2Merrillをこえることは難しいかもしれない。レンズが交換可能な汎用タイプであるからだ。
同時に、ベイヤー方式の限界も感ずる。データを補間された画像はやはり真実ではない。これはフイルムにも無い残念な事実である。
現時点では35mmF1.4GはD800Eの能力を出し切ってはいないと思う。いや、逆かもしれない。D800Eが35mmF1.4Gの能力を出し切っていないのかも知れない。
D800EとDP2Merrillの構造的違いが全てというのが結論であった。どちらも孤高のカメラであることには違いが無かった。
余談であるが、同じシャッタースピードならばDP2Merrillの方が手振れは俄然少ない。軽いからだ。
D800Eではかなり心してシャッターを切っても、1/60ではほとんどが手振れを認識できた。通常では解らないレベルだがD800Eでは誤魔化しが聞かない。35mmなどはスナップ用として用いるが、手振れ補正が欲しいところだ。何せカメラもレンズも重すぎる。
前述のように、DP2Merrillは画面全体に均一な精緻な画像を結ぶから、複写のように精緻なものを求めるのであればDP2Merrillを使用する。
そうでなければD800Eを持参するのが良いと感ずる。
DP2Merrillは海外旅行などには最も相応しいカメラであると思う。期待は絶対に裏切らないカメラだ。
ちなみに言うならば、人間の見た目の色彩にもっとも忠実に再現するカメラは残念ながらニコンD800Eを置いて他にはないと思う。正確な色彩ではない。ただ言えるのは忠実なのだ。ホワイトバランスも含めて破綻が少ない。見た目に近い色彩と言って良い。これはある意味つまらないことなのだ。出来上がった画像を見て特別ハラハラドキドキすることはまず無い。
絶対に見た目を超えることが無く、しかも限りなく近いのだ。この普通さが他のカメラではまず出ないし数十年やってて逢ったことが無いのだ。
それは本当に凄い、フツーと言うのが何よりも凄いのだ。
決して脚色することが無く、つまらない風景はやはりつまらなく写す。汚い天気の時にはやはり汚く写す。とても残念なカメラなのだ。だから、見た目以上には写してくれないから風景写真家には嫌われるだろうし実際使わないはずだ。生活掛かってるからね。
数ヶ月撮った写真に見た目より良く撮れた写真は一枚も無い。やなカメラだ。しかし、最も信頼できるカメラであり最も真実に近い写真を提供してくれるのも、D800Eしかない。だから使うし、レンズにも大枚を叩く。
写真の楽しさはクリエイトである。創造である。写真家ならばどのカメラを選ぶのか、作家ならばどのカメラを選ぶのか・・・。自ずと解る物なのです。
随分話が反れたが、
やはりDP2Merrillは唯一無二のカメラだから皆さんは心して手に入れてもらいたい。ただ、楽して撮れるカメラでもないし
興味本位の人は止めた方が良い。シグマにも失礼だし、亡きMerrill氏にも失礼だ。
写真家ならば、武士と同じ。大小を身に着けるのは当然だし。
ただ、どちらが大でどちらが小なのかは解らない。