今回は1964年に発売になったF用の標準レンズを紹介。
ニコマート発売後というよりは、0mmF1.4発売後はニコマート等の普及価格カメラの標準レンズで在り続けた名レンズである。以下お写真。
やはり、レンズ面にロゴが刻印されているのは良い。(シリアルは消している)正式に言うと刻印ではなく、板金に型打ちしたもののようである。レンズが小さいが、奥に引っ込んでいるのが何んとも言えず良さげなのである。
発売時価格はおよそ13,000円から14,500円程度と思われる。それを考えると中古価格は高いの一言。
少しチリが混入しているが、気にしない。
年代ものであるが、丁寧に使われている。やはり手荒に扱われたものは、躊躇するのは言うまでもない。
深く刻まれたローレットが、レンズがありますよ~という感じで好いのだ。
奥ゆかしいのである。
当該レンズにはL39フイルターが付いていた。H・Cタイプは多層膜コーティングなのでL37をニコンは推奨している。
当個体はHタイプの単層コーティングであり、L39を使用する
ニッコールHオート50mmF2のレンズ構成図。
(ニコンデータより)
4群6枚のガウスタイプである。
初期の5cmとはレンズ構成が異なる。
多層膜コーティングのH・Cタイプとはレンズ構成が同じなので、フレヤーやコントラストの面を除けば、Hタイプでもなんら問題のない描写と言える。
50mmF1.4は明るいが重いので、205gと言う軽さは貴重である。
現行のAiAF50mmF1.8Dのレンズ構成図。(ニコンカタログより)
群6枚のガウスタイプ。2枚目と3枚目の曲率が異なっている。
最短撮影距離は42cm。重さはさらに軽くなり、155gしかない。
外装も含めチープさは拭えないが、作例を見る限り描写は素晴らしいに尽きる。
50mmF1.4はGタイプになってレンズ枚数が1枚増えた。最後部に1枚追加したのだ。この変更に50年近く掛かっている。と言うより、変えることができなかったと言えるのだそうな。
50mmはニコンの顔であり、変えることにより顔を汚すことがあってはならなかったのだ。
なるほど、尤もなことであろう。
しかして、Gタイプレンズは新しく描写も良くなって発売された。
しかし、この発売によって過去のレンズが否定されることもまたなかったのである。
現行のAiAF50mmF1.4Dのレンズ構成図。
(ニコンカタログより)
AF50mmF1.8Dに比べレンズが1枚多い。
それ以外は全く変らない。
このレンズ構成は最初のニッコールSオート50mmF1.4とほぼ同じで、2枚目と3枚目が張り合わせになっていないだけの違いである。
つまり、基本は50年近く変っていないのである。
現行のAiAF50mmF1.4Gのレンズ構成図。
(ニコンカタログより)
50mm1.4Dより1枚レンズが増えている。
レンズの曲率が微妙に異なるレンズがあり、
細部に検討の跡が見られる。
ニッコールSオート50mmF1.4を設計したのは脇本氏と清水氏とある。(ニッコール千夜一夜より)
ニッコールSオート50mmF2の性能を超えるべく、3年の年月をかけてようやく完成したのだそうな。
それから数十年、もう脇本氏はいない。
このGタイプのレンズ構成を、脇本氏は試したのであろうか。今となっては伺い知ることも叶わない。