オーディオにおいて、最も音の変化が大きいのはスピーカーシステムです。
アンプを変えたところでその差はスピーカーシステムほど違いません。
それほどに、スピーカーシステムの音の違いは顕著です。 これはもう、経験不問で分か
ります。
本格的なスピーカーシステムはどこにでも置いてある訳ではないので、専門誌の評価リ
ポートを丹念に読みます。 長年雑誌を読んでると、評論家の好みや評価の理由も分かる
ようになってきます。 製品のスペックやら構造は大事で、高額製品ほど拘りがあったり
します。
メーカーのトーンと言うものも存在しますから、好きなメーカー、嫌いなメーカーも出て
くる訳です。
高額高級品になる程、試聴は難しくなります。
簡単に試聴、と言う訳にはいかないのです。
製品は50キロから100キロを超えますので、結線も移動も簡単ではないのです。
オーディオショップなどでは、日にちを決めたりして試聴の機会を設けています。
一般の製品と同じ場所に展示してあるものは、何時でも試聴はできるのが普通です。
試聴の状況も極めて重要で、壁一面にスピーカーを埋めてある所は参考にはなりません。
そうであっても、試聴する製品(=お目当ての製品)は前に出ていることが必須条件で
す。 メーカーの試聴室は、比較的安心です。
オーディオショップの試聴会は、スピーカーの配置に問題があることが多いです。
狭かったり、スピーカーの後方にやたらと空間があったり
あまり理想の状態ではない場合が多いです。
CDやらアンプは最高峰の物を使いますので、自宅のアンプで再生したらどうなるのか
その辺りも考えなくてはいけません。
フォステクスのスピーカーの、絞りには驚きましたね。
余りジッと見たくない風貌です。 音は透明と言うか、余分な音が付帯しない感じ。
PIEGAのスピーカーシステムも変わっていました。 小さいのですね、他の同価格帯のス
ピーカーシステムに比べると。どうも、アルミの塊の箱なので、スピーカーの素の音がそ
のまま出てくるような感じです。 両社とも、見た目と違った音が出ます。
FOSTEX G2000 2008年 1,200,000円 (ペア)
PIEGA TC70X 2012年 1,575,000円 (ペア)
KEF Reference 3は、普段聞いている廉価版の親玉と言う感じです。
特別これと言った印象がありません。 TAD CE1は鳴り物入りでデビューと言う
感じで期待して試聴会に行きました。 作り込みなどを考えると、理解できなくもないで
すが、違和感は何でだろうといまだに思います。
KEF Reference 3 2015年 1,527,120円 税込 (ペア)
パイオニア TAD CE1 2014年 1,600,000円 税別 (ペア)
2014年 TAD CE1 試聴会の感想です。
2014年11月末発売のTADシリーズの最廉価版のスピーカーシステムの視聴会があったので、
早速行ってみた。場所は秋葉原某オーディオ専門店。
TADの説明員の説明を挟みながら約二時間。ハイレゾ音源も交えてジャンルは多岐にわたった。
感じたのは、意外なほどの大人しさ。いや、椅子席は15席で二列目の端だったからかも知れないが・・・。
音の透明度は解る。スケールもブックシェルフを考えると決して小さくはない。
弦楽器はいいが、ブラス系が同時合奏するとやや分解能に欠けるようにも聴こえた。少なくともこの席では。
女性ボーカルはやや精彩を欠くというか、もしかしたらこの音が本当の音なのかも知れない。
視聴室は広いのだが、他のスピーカーが沢山あるので、半分前に出てきたように設定。音響ボードが取り巻いて壁を作っている感じ。どうも、このせいでボーカルの抜けが悪いのかも知れない・・・。
それでも、我が家のB&WやらKEFと比較したらどうなのかと言ったら、間違いなくTADCE-1の音は良い。
我が家の安価システムに比べると、音に相応の厚みがあるように聞こえる。
ピアノの音はやや高音より、やせ気味にも聴こえるが、これは視聴のCDがそうなのかも知れない・・・。
ビヴラホンの音は純度がとても良い。バイオリンではやや高音部が不足して聞こえる。
厚みはあるし繊細さもあるのだが、演奏者は見えてこない。
いくらでも音量を上げられるスピーカなのだろう。そういう意味では嫌みのないスピーカーだと言える。
B&Wのスピーカーのような押しの強さが感じられない。
B&Wの800ダイヤモンドをこの同じ部屋で視聴したことがあるが、その時のような驚きと感動は全く無かった。
これは期待して来ただけに残念な点。
やはり中音部から高音部にかけてはB&Wのようにバッフル効果のないスピーカーシステムが功を奏するような気がする。
確かに同軸スピーカーは定位に長けていることは認めるが、反面コーンとの干渉も気になる・・・。
つながりが良いとはいえど、異なる振動板は所詮つながりが悪い。道路のアスファルトと路肩のコンクリートの段差をいくら平坦にしたところでアスファルトはコンクリートになれないし、コンクリートはアスファルトにはなれない。
平坦なのは見た目、つまりオーディオでいえば測定器のデータだけということになる。
つまり、音楽性は異素材のものである限り同軸でない従来のスピーカーシステムは決し大きなマイナスとはならない。
KEFの同軸もそうであるが、昔流行ったアルテックのスピーカーやらかつてのパイオニアPAXシリーズのマルチセルラホーンの時代とは違う気がする。
やはり高音と中高音のつながりが周波数的、音圧的なつながりではなく、異素材のつながりとして聞こえてしまうのだ。
よって、音が痩せる。クリアーなのだけれど、何かが削がれている。
少なくとも私にはそう聞こえた。
楽器は点音源ではない。オーケストラも点音源ではない。ピアノもそう。
点音源のメリットは体を動かしても音源が移動しないこと。逆に言えばメリットはそれだけかも知れない。
優れたユニットはそれどうしが干渉しないように離すのが正しいのではないか。
聴取位置は決まっているのだから、中高音部をチルト出来るように考えた方がオーディオ的には良いはずだ。
筆者のようにオーディオの黄金期を通ってきた者には、最新技術の製品には拒否反応を起こすようなきらいがあります。
長年の膨大な知識と言うか、オーディオの塊のような物があって、ついつい一言、言いたくたくなってしまうのです。
同軸は昔もそうでしたが、同軸必ずしもベストじゃないんですね。 点音源はベストだけれども、同軸は見せかけの点音源なのですね。
決して最良の音にはならないのですよ。 癖が残るのです癖が。