マルチチャンネルアンプシステムは究極のオーデイオシステムと言われた。
オーディオの黄金期にはアンプを製造するメーカーは、全てと言って良いほど
チャンネルデバイダーを発売した。理由は至極簡単、アンプがたくさん売れると踏んだのだ。
しかし、実際はそうはならなかった。スピーカーの数だけパワーアンプが必要であり、一般向けには小型のパワーアンプを発売する必要があった。オーデイオファイルの中にはチャンネルデバイダーが入ることの音質の劣化が、マルチ駆動を阻害するのではとの意見も多々あった。
本来のマルチ駆動は、それぞれに異なるスピーカーユニットのレベルを揃えることだった。それならばと、帯域のレベルを任意に変えられるグラフィックイコライザーも多くが発売された。高級品にはマイクが付属していて部屋の音響に合わせて加減するのだ。
中にはグラフィックイコライザーとチャンネルデバイダーを併用する輩も出現した。
勿論、周波数特性が平たんになるのは理想ではあるが所詮作られた音になる。
素のままの音はどこかに行って、全く違う性質の音になるのは否めない。
現在も発売をしているアキュフェーズのチャンネルデバイダーは是非内部を見て頂きたい。半端じゃない物量と品質の高さに驚き納得するだろう。
DIGITAL FREQUENCY DIVIDING NETWORK DF-75
1976年から5代目になるチャンネルデバイダー。
今は撤退したオーデイオメーカーも多数なので、当時の製品はネットで検索した。
以下はネットの製品画像である。
チャンネルデバイダーは電気的帯域分割装置なので、コントロールアンプ(=プリアンプ)に属する。 当然なが通常のコントロールアンプに内蔵した製品も存在した。
ソニー 1970年 サンスイ 1969年 チャンネルデバイダー
ソニーもサンスイも、これらを使用できる小型のパワーアンプを発売していた。
ソニーマルチチャンネル用小型パワーアンプ 1965年~1972年
ステレオ仕様
サンスイ マルチチャンネル用小型パワーアンプ 1968年
ステレオ仕様
テクニクス ヤマハ 1979年 チャンネルデバイダー
テクニクス 1980年 1981年 ステレオパワーアンプ
ヤマハ 1980年 1990年
モノラルパワーアンプ
パイオニア 1970年 トリオ 1969年 チャンネルデバイダー
トリオ モノラルパワーアンプ 1979年 1980年
パイオニア モノラルパワーアンプ 1980年 1982年
ラックスマン 1965年頃 1999年 チャンネルデバイダー
ラックスマン モノラルパワーアンプ 1970年
※ 画像はオーディオの足跡様及びネットより引用しました。
チャンネルデバイダーと従来からのデバイディングネットワークとどこが違うのか、
ネットで評論家の林正儀(はやしまさのり)氏が大変分かりやすく説明している。
ここに一部紹介したい。
従来のコイルとコンデンサを使うLCネットワーク。 HPFはハイパスフィルタ。
BPFはバンドパスフィルタ。LPFはローパスフィルタの略である。
HPFはハイ(=高域)をパス(=通す)のでHPFと言う。以下同様である
コイルの巻線とコンデンサの数値でカットオフ値が変わる。また単純な6dbと急俊な12dbなどが自由に設定できる。
この組み合わせだけではスピーカーユニットのレベルを調整できないので、アッテネーターをいれて減衰させる。勿論上昇は出来ない、下げるだけである。
通常はウーファーは能率が低く、スコーカーやツイターは能率が高い。
ホーン型はホーン効果で更に音圧が上がる。これを下げるわけである。
ここには絶対的な問題点がある。 つまり総じてレベルが低下するのだ。
このレベルを補うためにはアンプのパワーが必要となる。状況によってはパワー不足にもなるのだ。 これをドライブ力不足と言う。
これを解決するのは、LCネットワークに変えてチャンネルデバイダーを付け各スピーカーユニットにそれぞれをドライブするアンプを割り当てるのが最適となる。
非常に物々しいシステムになるので、場所も予算も必要になるだろう。
ただ精神衛生的に言えば、1万円や5千円のスピーカーユニット個々に10万円のアンプやらチャンネルデバイダーを使ってどうなのかと言うのも事実だろう。3ウエイならばアンプで30万円もかかってしまう。方や鳴らすスピーカーユニットは5千円や1万円だ。
※イラスト図は林正儀様のホームページより引用しました。